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エネルギー価格と資産価格はどうなるか

2021.10.29

 新型コロナウィルスの影響による緊急事態宣言が全国で解除され、街なかでは飲食店の時短営業もなくなり、経済活動が徐々に復活してきた。経済活動の本格化は日本よりも米欧など海外がいち早く、その影響はエネルギー価格の上昇というかたちで現れているとされている。ガソリン価格は値上げが続き、今後の見通しも上昇というのが多くの識者の見方だ。2020年以降上昇が続く国際的な木材価格も、今回のガソリンの値上がりと同様、判で押したように「コロナ後の経済回復が影響した」ということだが。これらの理由は果たして適切だろうか...

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脱炭素ニューステージ、不動産各社対応続々
―再生可能エネ100%化へ、木造高層オフィスも建築

2021.10.01

 気候危機が迫るなか、政府のカーボンニュートラル(CO2排出ゼロ)宣言を受け、不動産各社はSDGs・脱炭素関連の取り組みを進めている。背景には、環境経営に乗り遅れれば、ESG投資家をはじめとする各方面からの評価が得られなくなることへの危機感があり、対応のスピードは加速しつつある。  使用電力を再生可能エネルギーとすることを表明したのが三菱地所や三井不動産など。地所は今年度から、丸ビルや新丸ビルなど、東京・大手町、丸の内、有楽町(大・丸・有エリア)...

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都心3区で今年竣工する大型ビルは少なめー23年以降の竣工予定は港区が圧倒的

2021.07.30

 東京都心3区(千代田区・中央区・港区)における2021年の大型オフィスビルの新規供給動向は谷間だったといえるかもしれない。東京都の公表資料によると、昨年2020年における延床面積1万㎡以上の大型テナントオフィスビルの竣工件数は、千代田区が4件、港区が5件、中央区が1件の計10件だった。今年21年の竣工(予定)をみると、千代田区が1件、港区3件、中央区1件の計5件と昨年比で半分となる。千代田区の「1」は、いま話題を集めているオフィスビルで、高さ日本一を誇る「TOKYO TORCH常盤橋タワー」(延床面積14万6000㎡)だ。そ...

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ウッドショックと住宅市場との関係

2021.07.02

 コロナ禍で世界的に木材価格が上昇している。コロナ禍の影響で米国や中国など、世界的に住宅などの建築需要が高まっているためだ。東京都内の木材市場関係者によると「米国では都市部の人口集中地域から、ソーシャルディスタンスを保つことができる郊外の一戸建てへ移り住む人が増えている」とのこと。そのためこうした都市部の郊外で木造戸建て住宅の需要がにわかに高まり、木材価格が上昇しているの。アメリカでの需要拡大は日本向けの北米材の輸出のストップにつながった。なお日本では新築される住宅の大半は木造であ...

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東京八重洲・日本橋の商業地が10年ぶりの下落にーただし賃貸市場は健全を維持

2021.02.26

 国土交通省がまとめた2020年第4四半期(2020年10月1日~2021年1月1日)の主要都市の高度利用地地価動向報告「地価LOOKレポート」によると、地価動向を調査した43地区(東京圏)のうち、地価が上昇した地区は6地区(前回0地区)、横ばいが26地区(34地区)、下落11地区(9地区)となった。コロナ禍でも地価上昇が見られた地点が増えた一方で、下落地点も増えている。  コロナの影響で、区部では「歌舞伎町」「上野」が3四半期連続で「3%以上6%未満」の下落となった。このほか「銀座中央」「渋谷」...

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コロナ禍ではあるもののマンション価格が下がらない理由

2020.10.02

 新型コロナウィルスの蔓延で国内景気は揺らぎ、先日発表された基準地価(都道府県地価調査、7月1日時点)では日本の地価は3年ぶりの下落となった。インバウンドの減少などから地方圏や商業地を中心に下落したものの、内訳をみると東京圏では住宅地が0.2%の微減にとどまり、商業地に至っては1.0%の上昇。都道府県別でみると、東京都は住宅地が0.2%、商業地が1.3%それぞれ上昇している。コロナ禍でも上昇を維持した東京の住宅市場、とりわけ分譲マンションの価格動向から今後の住宅市場動向を占ってみたい。  不動産経済研究所の調べによると、首都圏(東京...

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東京の住宅流通市場、6・7月は回復基調が鮮明に

2020.08.28

外出自粛制限で動きが無かった東京の住宅の売買市場。しかし3月から5月を底に、6月以降は買い手の動きが復活、その動きは夏に入って活発化している。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の中古マンション市場動向によると、7月の首都圏の中古マンションの成約件数は5カ月連続で前年同月割れとなった。ただしその減少率は前年同月比2.4%という水準まで改善した。流通市場の実態としては、レインズのデータベース掲載前に成約するケースがあることから、プラスに転じていると考えていい。不動産流通会社にヒアリングをすると、7月単月でプ...

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分譲マンションの価格上昇メカニズムはどうなっているのか
―港区のマンション価格の高額化が原因、今後更なる高額物件も

2020.02.28

 分譲マンション価格の「高額化」が止まらない。不動産経済研究所が発表した1月のマンション市場動向調査結果によると、平均価格は前年同月比47.9%上昇の8360万円、㎡単価は同比55.2%上昇の126.2万円となり、バブル期の価格を上回るとともに、73年の調査開始以来過去最高を更新した。人口減であることに加え、デフレが払しょくされたわけではなく、必ずしも好調とは言えない国内景気において、この価格形成の要因は一体どうなっているのだろうか。  例年1月は供給戸数が少なくなる傾向にある。そのなかで価格が高い東京都区部の供給が増えたことが、今回の価格上昇の背景に...

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相次ぐ台風・豪雨、不動産選びで自然災害リスクを避けるにはどうしたらいいか

2019.12.27

2019年は数々の自然災害が発生した一年だった。関東地方を直撃した台風15号と19号により、多くの住宅が浸水被害に遭ったことは記憶に新しい。不動産を購入する際、自然災害リスクを避けるために注意すべきことは何があるだろうか。  台風19号における、川崎市・武蔵小杉のタワーマンションの浸水被害は全国的なニュースとなった。武蔵小杉は多摩川にほど近い低地であり、建物内に侵入した水の排出が追いつかなかった。建物内の電気設備は低層階にあり、大規模な...

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消費増税後の住宅市場の落ち込みは政府の広報不足?
〜増税後の購入の有利さが、消費者に届いていない可能性も

2019.11.29

10月1日に実施された消費増税を受けて、住宅市場は今、どうなっているのだろうか。戸建て住宅メーカーで構成する業界団体、住宅生産団体連合会(住団連)が四半期に一度まとめている、最新の経営者に対する景況感調査の調査結果によると、戸建て注文住宅に関する回答で「増税に伴うマインドの低下で展示場来場数が減少、かつ商談の結論が先延ばしにされている」...

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災害激甚化に対応、ハザード説明義務化も
―住宅各社で蓄電池搭載、街全体の防災など

2019.11.01

 日々激甚化する災害への対応が官民で急がれている。住宅各社は、自前の技術力を総動員し、防災面で強い住宅・まちづくりに取り組んでいる。  9月に発生した台風15号では、千葉などの被災地で建物の損傷以外に、電気が止まるなどのトラブルが発生した。こうした停電の問題を解決するため、大和ハウス工業が一部の戸建て住宅に、家庭用リチウム蓄電池の搭載を始めている。大和ハが出資する電池ベンチャー、エリーパワーが開発した畜電池を搭載するもの。軽量鉄骨戸建て住宅「ジーヴォ・シグマ」には太陽光発電システムとエネファーム、リチウムイオン蓄電池(5.4kwh)からなる「...

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顕著な地価上昇は人が集う場所に

2019.09.27

9月19日に公表された19年・都道府県地価調査では、全国の商業地で地価は更に上昇し、住宅地では下げ止まりが鮮明となった。近年の地価動向の背景として押さえておくべきポイントは観光需要の拡大で、とりわけインバウンドの影響が大きく地価に反映されている。アジア系外国人が多く訪れる大阪・ミナミや、オーストラリアや欧米からのスキー需要が強い北海道・ニセコがその象徴だろう。なんば(大阪市中央区宗右衛門町)は前年比45%上昇。ニセコ(倶知安)は同66%も上昇した。ただし気になるのは、直近の訪日外国人旅行者数の動向で、かろうじて過去最高を更新しているが、伸び率は昨年対比で下がっている。最大の供給地である中国からの旅行者は増えているが...

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「五反田」、「田町・三田」のIT企業集積にみる職住近接のあり方

2019.08.30

東京ではオフィスビルの入居率、および賃料の上昇傾向が継続している。その理由の一つに、都心部で活発な再開発の影響がある。新しい建物を建てるために既存の建物を壊すため、一時的にオフィスの床面積が減る。さらに再開発により新規供給される床は従前よりも賃料が高くなるほか、周辺の賃料相場をも引き上げる。再開発の余波で、上昇する家賃についていける企業は比較的規模の大きい企業だ。一方でITベンチャーをはじめとする、スタートアップ企業は、ビル探しに苦労することになる。そこで彼らは再開...

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再開発で大きく変わる街・渋谷、地価も大きく上昇

2019.08.02

 東京都区部の各地で進む再開発。そのなかでも再開発によって大きく変化するのがJR渋谷駅周辺と言われている。渋谷駅の駅上を含む、駅に直結・隣接したエリアで複数の大規模開発が進められていること、駅のホームの付け替えといった、駅構造のリニューアルも同時進行させていることなどが、その理由だ。渋谷駅上には、高さ約230mの超高層ビル3棟からなる「渋谷スクランブルスクエア」が開発中で、このほか開発済み・開発中の7プロジェクトの総開発面積は79万㎡に達する。再開発を実質主導する東京急行電鉄によると...