東京ドーム活性化、吉本やサッカー協会と連携

―巨人軍・築地移転なら抜本的な事業再構築へ

 ドーム球場の建替えを視野に、東京ドームシティのリニューアルを進めてきた東京ドームだが、ここにきて読売巨人軍の築地移転が現実味を帯び、抜本的な再開発ビジョンが問われる展開となりつつある。

 外資ファンドに買収を仕掛けられた㈱東京ドームにホワイトナイトとして三井不動産が出資参画したのがコロナ禍中の2021年1月。東京ドームはコロナ禍、集客減にあえぎ、老朽化で球場の建替えも迫られるなか、三井不の支援を受け、当面の策として球場内バックスクリーンのメインビジョン新設や多様な観戦スタイルに対応した新たな観客席の設置など、球場内のリニューアルを実施。また、球場周辺のドームシティに、東京ドームと吉本興業のコラボによる新劇場と、日本サッカー協会(JFA)と連携した体験型コンテンツ施設「サッカー文化創造拠点」を相次ぎ、投入することを決めた。

 特に、三井不とJFAとは、21年10月に「サッカーの力を活用した街づくり連携および拠点再編に関する基本協定」を交わし、三井不グループの施設でサッカーの試合を公開放映したりイベントを開いたりするメジャーパートナー契約を締結。今年に入りJFAは、協会本部を東京ドームシティに隣接し、三井不などが持つ「トヨタ東京ビル」に移す一方、移転元の「JFAハウス」(東京都文京区)はマンションデベロッパーの三井不動産レジデンシャルに売却した。三井不とJFAに東京ドームを交えた急接近は、サッカー兼用の東京ドーム建替えを目論む動きとみられていたが、かねてから読売巨人軍が自前の球場建設を望み、「都心最後の大規模用地」ともいわれる築地市場跡地の開発事業者募集が始められたことで様相は一変した。

 築地市場跡地を巡っては、以前、読売巨人軍が新球場建設地として検討したが、所有者である東京都が「食のテーマパーク」構想を掲げ、更地のまま、開発がストップしていた。三井不は、読売巨人軍の親会社である読売新聞グループ本社やトヨタグループのトヨタ不動産などと組み、事業者コンペに参画。応募者は他にもいるが、銀座に近い湾岸、野球・サッカー・コンサートの多目的ドームスタジアムが最有力とみられている。東京ドームの関係者は「ビジョンはもちろん描いている」と話すが、「主」を失う東京ドームとしては、抜本的な事業再構築が求められることになる。

2023.11.2