分譲マンションの価格上昇メカニズムはどうなっているのか

―港区のマンション価格の高額化が原因、今後更なる高額物件も

 分譲マンション価格の「高額化」が止まらない。不動産経済研究所が発表した1月のマンション市場動向調査結果によると、平均価格は前年同月比47.9%上昇の8360万円、㎡単価は同比55.2%上昇の126.2万円となり、バブル期の価格を上回るとともに、73年の調査開始以来過去最高を更新した。人口減であることに加え、デフレが払しょくされたわけではなく、必ずしも好調とは言えない国内景気において、この価格形成の要因は一体どうなっているのだろうか。

 例年1月は供給戸数が少なくなる傾向にある。そのなかで価格が高い東京都区部の供給が増えたことが、今回の価格上昇の背景にある。エリア別の供給動向をみると、都区部が21.1%増の734戸と都心エリアが増加した一方で、郊外の神奈川県、埼玉県、千葉県は大幅減となっている。なかでも埼玉県は89.9%減の59戸と大きく落ち込んだ。首都圏の供給に占める都区部のシェアは、前年同月比27.1㌽アップの59%と、全体の6割に迫る供給偏在が起きている。

 そして都心部で高額物件が「大量供給」された影響から、戸当たり、単価ともに大きく上昇することに繋がった。1月の調査結果には、東京・港区の高級マンションが約240戸も計上されている。この内訳は東京建物など3社が販売する「白金ザ・スカイ」の第一期販売分のうちの約200戸、東急不動産の「ブランズ愛宕虎ノ門」のうちの約40戸の計2物件で、いずれも平均価格が億を超える億ションだ。その一方で郊外のマンション価格上昇は既に一服しており、例えば1月の埼玉県は戸当たり、単価ともに下落している。郊外は価格が下がっているが供給が減って全体の数値に影響を及ぼしにくくになっており、ほぼ港区の2物件だけで全体の価格上昇に一役買ったということになる。マンション価格はバブル期のように軒並み価格が上昇しているというわけではなく、都心の一部物件だけが上がっているというのが実情だ。

 さらに異常値の価格のマンションというものが少しずつ発売されるようになってきた。記憶に新しいのが、数年前に完売した「パークマンション檜町公園」(総戸数46戸)で、最高額住戸は55億円という超高額物件だった。さらに表参道エリアで今月にも発売されようとしているのが「マーク・オモテサンドウ・ワン」で、最高額住戸は67億6000万円台が予定されている。なおこの物件の売主は外資のファンドで、日本のデベロッパーではない。首都圏の平均販売価格8300万円強という価格水準は、例えば平均9000万円程度とされる韓国・ソウル市の住宅中央価格に比べればまだ安い。台湾・台北市内のマンションも1億円超は当たり前だ。周辺国と比べて東京のマーケットはまだ割安だと考えている外国人が少なからずいるのかもしれない。

 なお都区部シェアが直近で最も高かったのは2013年で、当時のシェアは5割を超えていた。ただし当時の建築費は今と比べて低かったため、価格面で新築マンションは「お買い得」な物件ばかりであった。なお先に挙げた「白金ザ・スカイ」の一期販売は約300戸であったため、100戸は売れ残った計算となる。マンション価格は上昇しているが、都心の人気があるためでは必ずしもない、というところには注意が必要だ。

2020.02.28