人口世界一、インドへの不動産進出相次ぐ

―商社がマンション、不動産大手はオフィスなど

 人口世界一となった成長国・インドへの不動産進出が相次いでいる。先陣を切ったのは総合商社だが、ここにきて大手不動産会社もプロジェクトに取り組む。当初は住居系の開発が中心だったが、オフィス開発や中心部での大規模な複合開発の計画も発表が続いている。

 日系の不動産プロジェクトで先鞭をつけたのは、2018年、大手総合商社が現地資本と合弁会社を設立、デリー首都圏に位置する新興開発都市・グルグラム市で開始したマンションプロジェクト「クリスミシティ」だ。ニューデリーとインディラガンジー国際空港を結ぶ主要幹線道路に近接し、全体計画敷地約26ヘクタールに、住宅約5,000戸と商業施設、オフィスビルを全8期にわたり建設する計画。このうちの敷地約2.1ヘクタールに超高層マンション2棟・計約430戸を建設した。これに続いたのが別の大手総合商社によるマンションプロジェクト。ムンバイ郊外の超高層分譲マンション「アトモスフィア・プロジェクト」(約700戸)に参画した。2LDKで価格は約1300万インドルピー(約2000万円)から。主に現地中間層の実需を想定して販売を進めており、それに続く、第2弾のマンションプロジェクト(マハーラーシュトラ州プネ市、約330戸)も現地中間層の実需をターゲットとした。

 これらに対し、オフィス開発を手掛けているのが大手不動産会社。IT都市・バンガロールで現地企業と組み、IT企業向けのオフィスを開発している。全2期のうち第1期工事で、4棟構成の12階建てビル、総貸付面積は約33万㎡。テナントリーシングはITのほか金融機関や製薬関連など。順調に推移しているという。これとは別の大手不動産会社は、シンガポールの企業と組み、インド第4の都市、成長の伸びしろも大きいチェンナイでオフィス開発「インターナショナルテックパーク・チェンナイ、ラジアルロード」に乗り出した。敷地面積5・25ヘクタール。地上11階地下3階建て。IT企業が集まる大通りに2棟のオフィスビルを建てる。大規模なフードコートや運動施設、医療センター、スパ、コワーキングなども整備する。

 さらに、別の大手不動産会社によるムンバイ中心部における超高層複合開発も発表された。同社はムンバイで3件の開発用地を確保しており、3件の総延床面積は120万㎡を超える。詳しい開発内容やスケジュールなどは現時点で未定だが、賃貸オフィスやホテル、商業、住宅などを開発し、2030年代の全面開業を目指す。

 インドで不動産展開する玄海キャピタルマネジメントの松尾正俊社長は、インド投資でやってはいけないこととして、「安易な土地買収と共同事業の契約、開発許認可の取得」を挙げる。一方、今後やるべきこととして、「良いオフィスへの長期投資もしくは共同開発、パートナーをしっかり選んだ住宅の共同開発、分譲住宅への建築ローンなど」としている。

2024.02.02