エネルギー価格と資産価格はどうなるか

 新型コロナウィルスの影響による緊急事態宣言が全国で解除され、街なかでは飲食店の時短営業もなくなり、経済活動が徐々に復活してきた。経済活動の本格化は日本よりも米欧など海外がいち早く、その影響はエネルギー価格の上昇というかたちで現れているとされている。ガソリン価格は値上げが続き、今後の見通しも上昇というのが多くの識者の見方だ。2020年以降上昇が続く国際的な木材価格も、今回のガソリンの値上がりと同様、判で押したように「コロナ後の経済回復が影響した」ということだが。これらの理由は果たして適切だろうか。

 巷では「ウッドショック」と騒がれていた2021の上半期。世界の木材価格はどのように推移していたのだろう。シカゴ先物市場で今年5月7日に1670$の値を付けた木材は、8月下旬には450$前後まで急激に下がり、10月に掛けて700$台にやや上昇はするも、市場は落ち着きが出てきている。もちろんコロナ前は350~400$程度の水準であったため、その時よりはまだ高いが、それでもピークの半値以下だ。この間、実需としての住宅需要は落ち着いたのだろうか。米国の9月の住宅着工件数は155.5万件で前年同月比9.8%増。住宅建築許可件数も158.9万件で2.3%増だ。2020年の第1四半期をボトムに急激に着工・許可件数が増大しており、減少の兆しが見えない。

 木材以外の商品はどうか。ニューヨーク市場原油先物のWTIは、20年4月に16$台だったのが、10月に80$台に乗せるなど急激に上昇している。しかし、コロナ禍を振り返るとWTIは、2020年4月20日に史上初となる「マイナス価格」を付けた。買ったらおカネが貰えるというおかしな状況だった。たしかにコロナで経済活動は縮小したが、ガソリンの需要がなくなったわけではない。ここから導き出される答えは何か。「石油業者ではなく原油自体を受け取りたくない投機筋を中心とする投資家は決済日が迫るなか、5月物の売りを急いだ」(日本経済新聞、20年4月27日付)という。つまり商品の価格の変動は、実体経済の影響よりも投機筋の影響が大きいということだ。投機筋が引きつつある木材市場は価格が急激にダウン、マーケットを見る限りウッドショックはほぼ終了しており、今問題になっている原油市場も同じように潮は引いていくと見たほうがいい。

2021.10.29