ウッドショックと住宅市場との関係

 コロナ禍で世界的に木材価格が上昇している。コロナ禍の影響で米国や中国など、世界的に住宅などの建築需要が高まっているためだ。東京都内の木材市場関係者によると「米国では都市部の人口集中地域から、ソーシャルディスタンスを保つことができる郊外の一戸建てへ移り住む人が増えている」とのこと。そのためこうした都市部の郊外で木造戸建て住宅の需要がにわかに高まり、木材価格が上昇しているの。アメリカでの需要拡大は日本向けの北米材の輸出のストップにつながった。なお日本では新築される住宅の大半は木造であり、しかも建築木材の5割は輸入材で、その大半が北米材。日本国内での木材のストックが危機的な状況となりつつある。

 こうした状況を受けて、住宅行政を所管する国土交通省が実態把握に乗り出した。中小工務店を対象に木材の価格高騰の影響について調査を実施したところ、実に9割の企業で木材の供給遅延が発生していることがわかった。この調査は5月末時点での状況をヒアリングしたもので、木材の供給遅延が生じているとの回答は実に92%に達している。ただしその一方で工事の遅れが生じているとの回答は3割で、工事の遅れが発生していないという回答は6割だったことから、現場ではまだ大きな問題とはなっていないようだ。ただし国交省では来るべき事態に備えて 工事の遅れや木材調達の状況などについて注視するとともに、工務店や住宅メーカーとの意見交換の場の設置など対応を行っていく予定だ。

 大手住宅会社への影響はどうなっているのだろうか。大手ハウスメーカーによると最終商品への価格転嫁は一部の企業の一部商品に止まる。3階建の木造建売住宅を供給するオープンハウス・ディベロップメントによると、当面の建設木材の手当てはあらかた済んだとした上で、「当社の戸建て住宅の単価は約4400万円だが木材の原価は120万円ほどで、仮に木材の価格が3割上がっても単価へのしわ寄せは36万円程度だ」と影響を分析し、「木材不足は話題作りの側面もある。長引くことはないだろう」との見解だ。

 実際に米国産材の価格は5月の最終週から2週続いて下落した。そのため、「米国市場は木材不足のピークを過ぎただろう」(日本木材総合情報センター)、「緩和の兆しが見え始めた」(住宅生産団体連合会)との意見もある。また建売事業者・パワービルダーでは国産材の確保へ、独自ルートを確保するなど、各々対応を進めている。国内の山林投資に向かっている建築事業者も出てきており、木を巡るプレーヤーの動きが活発化している。

2021.07.02