都心3区で今年竣工する大型ビルは少なめー23年以降の竣工予定は港区が圧倒的

 東京都心3区(千代田区・中央区・港区)における2021年の大型オフィスビルの新規供給動向は谷間だったといえるかもしれない。東京都の公表資料によると、昨年2020年における延床面積1万㎡以上の大型テナントオフィスビルの竣工件数は、千代田区が4件、港区が5件、中央区が1件の計10件だった。今年21年の竣工(予定)をみると、千代田区が1件、港区3件、中央区1件の計5件と昨年比で半分となる。千代田区の「1」は、いま話題を集めているオフィスビルで、高さ日本一を誇る「TOKYO TORCH常盤橋タワー」(延床面積14万6000㎡)だ。そして来年22年は20年レベルの供給が予定されており、千代田区3件、港区3件、中央区4件の計10件となりそうだ。注目物件は「東京ミッドタウン八重洲」(中央区、28万3800㎡)で、中央区アドレスのオフィスビルとしては過去最大級の延床面積を誇る。

 それ以降のオフィス供給計画は、都心3区で濃淡がはっきりしてくる。中央区では八重洲地区の再開発案件が1、2年に一度のペースで供給されるものの、八重洲以外の中央区、および千代田区の大型プロジェクトは断続的なものとなり、中型主体に移行していく。一方で港区は大型案件の強気の供給が続いていく。港区の23年竣工の大型案件は9件、24年竣工も9件、そして25年以降はわかっているだけで、28年末までに12件も供給されるのだ。

 その要因として、港区は従来型のオフィス立地である千代田・中央と比べ、中・低層の建築物が多く、再開発の余地がより多く残されていること。そして六本木、虎ノ門を筆頭に、外資やIT系企業が好むグローバルなビジネス環境が整備されていることが背景にある。それらの証左として、23年以降に竣工を控える大型ビルのうち、国家戦略特区の認定事業が10件存在する。そのコアとなりそうなのが、「六本木五丁目西地区市街地再開発」だ。森ビルと住友不動産が事務所、店舗、住宅、カンファレンス、ホテル、劇場、学校などからなる一大グローバル・エンタテイメント・シティを構築する。計画では延床面積は105万㎡という超ド級のプロジェクトだ。

 ところで港区では、都心とは言い難い「高輪ゲートウェイ」駅周辺も国家戦略特区認定がなされ、JR東日本によるオフィス・レジデンスの開発プロジェクトが進行中。港区では今後数年内に国家レベルの大規模プロジェクトが多数お目見えする。

2021.07.30