顕著な地価上昇は人が集う場所に
9月19日に公表された19年・都道府県地価調査では、全国の商業地で地価は更に上昇し、住宅地では下げ止まりが鮮明となった。近年の地価動向の背景として押さえておくべきポイントは観光需要の拡大で、とりわけインバウンドの影響が大きく地価に反映されている。アジア系外国人が多く訪れる大阪・ミナミや、オーストラリアや欧米からのスキー需要が強い北海道・ニセコがその象徴だろう。なんば(大阪市中央区宗右衛門町)は前年比45%上昇。ニセコ(倶知安)は同66%も上昇した。ただし気になるのは、直近の訪日外国人旅行者数の動向で、かろうじて過去最高を更新しているが、伸び率は昨年対比で下がっている。最大の供給地である中国からの旅行者は増えているが、韓国からの旅行者が減少していることなどがその理由だ。このことがアジアから近い九州地方に与える影響をどうみるかだ。
全国の地価の最高地点である、東京・銀座の明治屋銀座ビルの前の地価は、既にバブル期超えして久しいが、今年の上昇率は3%ほど。京都の中心部でも地価の上昇幅は一服感がでており、この理由として国土交通省は「京都市内におけるホテル建設需要の一巡」(地価調査課)を挙げる。とはいえ地価上昇の鈍化は、昨年から一昨年に掛けて一気に上昇したエリアに限られている。今後は一時の上昇率ほどではないにせよ、長期的にみて、人が集まる場所の地価が上昇していく傾向は、今後も変わらないとみていい。
なお半年前に公表された19年地価公示では、商業地だけでなく住宅地も上昇に転じている。都道府県地価調査とズレが生じているのは何故か。その理由は単純に調査地点が異なることから起きた現象で、地価公示と比べると都道府県地価調査は、調査ポイントがやや地価上昇の影響を受けにくい、郡部などの場所が多いためでもある。一方で地価公示は調査地点の変更を頻繁に行っており、不動産取引の結果を調査結果に反映させやすい。そのような調査の性質の違いを理解しておくことも不動産投資には必要なスキルになりそうだ。
(書き手=不動産経済研究所・記者 各務二朗)2019.09.27