消費増税後の住宅市場の落ち込みは政府の広報不足?
〜増税後の購入の有利さが、消費者に届いていない可能性も
10月1日に実施された消費増税を受けて、住宅市場は今、どうなっているのだろうか。戸建て住宅メーカーで構成する業界団体、住宅生産団体連合会(住団連)が四半期に一度まとめている、最新の経営者に対する景況感調査の調査結果によると、戸建て注文住宅に関する回答で「増税に伴うマインドの低下で展示場来場数が減少、かつ商談の結論が先延ばしにされている」などの厳しい意見が多くを占めた。一方で国は、消費税率の引上げ後の反動減対策として、①住宅ローン減税の控除期間の3年延長、②「すまい給付金」の拡充、③「次世代住宅ポイント制度」の創設、④贈与税非課税枠の拡大ーといった住宅取得支援策を用意している。これらを組み合わせることによって多くの場合、増税前よりも増税後の方がお得に購入できている。
支援策の効果についてシミュレーションで確認する。①については、仮に建物価格3000万円として消費税率8%の場合、税額は240万円となるが、今の税率では300万円となり、増税前比60万円の負担増になる。住宅ローン減税額はどうなるか。仮に住宅ローンの借入額も3000万円である場合、増税前だと控除額の総額は10年間で約265万円(年間最大控除額40万円、金利1%、借入期間35年)となるところ、3年延長によって、控除額の総額は約330万円まで膨らむ。65万円も減税額が上乗せされることになるため、増税後に購入した方が、5万円得になる計算となる。
さらに②については、給付金の給付額が増税前の「最大30万円」から、増税後は「最大50万円」へ拡充され、給付金を受けられる対象者の層が「年収510万円以下」から「775万円以下」へ緩和された。③については、新築住宅の購入時に最大35万円相当(35万ポイント)、リフォームの場合も最大30万円相当(30万ポイント)がポイント付与される。これは増税前には措置されていない制度だ。住宅購入の資金援助をしてもらう際の贈与税の非課税枠は、増税前が最大1200万円に過ぎなかったが、増税後は最大3000万円に拡充された。
住団連の調査結果では、経営者から今後の見通しとして「戸建ての集客減はまだ復調の兆しが見えず、引き続き棟数や金額に影響する」などのネガティブな回答もあった。国がこれだけの支援策が用意したにも関わらず、どうして需要が落ち込んだままの事態になっているのだろうか。住団連では一因として、住宅取得支援策の購入検討者らに向けた周知不足や、運用上の不備の可能性を指摘する。「これ以上(経営者の声が)厳しくなるなら、国に即座の追加対策の実施を要望したい」(住団連)と息巻く。なお延長された住宅ローン減税の適用要件は、今年の10月から20年12月末までの間に居住した場合。取り急ぎ、期間限定の制度であることを伝えることが必要となる。。
2019.11.29