デジタル田園都市とスーパーシティ構想にみる地方創生のあり方
政府による「地方創生」は14年にスタートし、その後7年間で日本版CCRC、地域ソサエティ5.0、地方創生テレワーク推進運動、スーパーシティ構想etc…など、その時々の流行や話題を織り交ぜながら様々なテーマ、スローガンのもと総花的に進められてきた。そして先月発足した岸田政権は「デジタル田園都市構想」なるものを新たなメニューに加えた。
「デジ田構想」の政策の方向性としては、地方のまちづくりにおいてデジタルをいかに実装するか、そして実装にあたり、いかに住民を取り残さないようにするか…というようなデジタル・ディバイドの脱却、デジタル社会におけるキャッチアップ的な要素が強い。
最近では民間で行われる住宅地開発にも「デジ田」のイメージを取り入れた街づくり構想がみられるようになった。埼玉県・久喜市の東武鉄道・南栗橋駅周辺で行われる「ブリッジ・ライフ・プラットフォーム構想」がその一例。地元行政と東武、トヨタホーム、イオン、早稲田大が連携し、先進的なスマートハウス・シティのほか、5Gの配備による自動宅配の実証実験などを通じ、サスティナブルな街づくりを進めようというものだ。ただし既存の法制度や技術の範囲内で行う開発は、規制が多く内容もさほど先進的とはいえない。そこで政府は既存の規制を自ら打破するような、よりやる気のある地方を支援するための尖ったメニューを用意している。それが「スーパーシティ構想」だ。スーパーシティとは、国家戦略特区の地域版といえるもので、大胆な規制改革により、まち全体で沿革教育・遠隔医療、自動走行や再生可能エネルギーの活用などを盛り込んだ「まるごと未来都市」を目指すというもの。個別の実証実験ではなく幅広く分野を跨ぎ、10年内にも実現されうる、実現可能な生活の先行実現を目指していく。提案募集には既に31都市から応募があり、早ければ12月にも5地域程度が選定される見込みだ。
政府はこの間、改革メニュー不足などの理由で全自治体に対し再提案を求めるなど、力の入り方は尋常ではない。昨今の地価動向をみると、地方都市でも地価の上昇地点が少しずつではあるが着実に増えてきた。地方都市の再開発が全国的に進んでおり、中心部への人口回帰と地価上昇が同時に進んでいるのだ。一方でその周辺部は人口減少が続く。地方都市の周辺部を維持していくには行政サービスをスムーズにし、インフラ維持などの行政コストをスリム化しなければならない。そのためのツールがデジタルだ。今後の地方都市における街づくりは、レベルに応じ、デジタルをどう実装するかの工夫が必要な時代に入っていく。
2021.12.03