CBRE、米国関税の市場影響を分析

―自動車関連のA級オフィス割合小さく

 シービーアールイー(CBRE)はこのほど、米国トランプ政権による関税政策が日本の不動産市場に及ぼす影響について分析を公表した。同社リサーチ部門責任者の羽仁千夏氏は、日本の不動産投資市場について「機関投資家の物件の選別が厳しくなる可能性はあるが、緩やかな金利上昇の環境下で、概ね25年の間は取引動向が堅調」と予測を示した。

 賃貸市況は、たとえばオフィスの活況を支える需要や賃料上昇の勢いに減速はありうるが、仮に解約が起きても退去まで一定の期間が必要になるため、空室率が年内に急上昇する可能性は低いとみている。そもそも、東京におけるグレードAの賃貸ビルで、製造業関連が占める面積の割合は16%、中でも自動車関連は6%と限られる。仮に、自動車関連が東京のグレードAビルで利用する面積を10%減少しても、空室率への影響は0・6ポイントほどの上昇圧力にとどまるという。物流施設の製造業の利用も限られ、中心繁華街での商業施設は出店意向が強いため、空室率や賃料の市況に急速な悪化はないとの想定だ。羽仁氏は「先行きが不透明になり、様子見に転じる動きはある」とするが「一部の機関投資家の間に、米国に投じた資金を、日本をはじめアジア太平洋に向ける意向も聞こえる。レンダーの融資姿勢も変わっていない。ファンダメンタルズから選別が強まる可能性はあるが、住宅、ホテルを含む幅広いアセットで堅調」と見込んでいる。

 取引市場で今後の動きを羽仁氏は「株安などの影響が出そうな個人投資家と、機関投資家の動きは異なりそうだ」と話す。「安定性のある日本で、バリューアッド投資が主流。東京都心、大阪、堅調に市場が成長する福岡でも検討が進む」と見通しを語った。

2025.05.16