国交省基準地価、建設費高騰の影響も

─都心の高価格地点鈍化、周辺に再評価

 建設コストの上昇を背景に、大規模再開発事業の中止や延期が全国で相次いでいる。にぎわいや利便性を向上させる再開発は、地価上昇の原動力になる。国土交通省が公表した25年都道府県地価調査(基準地価)では、建設費上昇の地価への影響がひとつの注目ポイントとなった。

 全国的な再開発見直しの象徴となった、JR中野駅前の中野サンプラザ跡地再開発。サンプラザの東側向かいにある基準地点「中野5―11」(中野2丁目)の変動率は+22・1%(前年+19・8%)で、前年より上昇の勢いが増した。近くの商店街・中野サンモールにある「中野5―7」も+18・2%(+13・0%)で、上昇を強めている。国交省は中野サンプラザ周辺の地価について、「他にも再開発が進捗していて、引き続き地価は上昇している」と説明する。

 「中野5―11」は、地価公示との共通地点で、半年ごとの地価の動きが追えるポイントだ。前半(24年基準地価~25年地価公示まで)が+11・2%、後半(25年地価公示~25年基準地価まで)は+9・8%だった。後半の上昇の勢いがやや弱まっている。JR新宿駅南口すぐの再開発ビルは、建設費高騰を理由に今年3月に完成時期が未定となり、建替え工事も中断している。計画地近くの商業地(基準地価のみの地点)「新宿5―4」は、+4・2%(+5・4%)で前年比で上昇幅が縮小した。新宿のこの地点の上昇幅縮小について国交省担当者は「再開発中止の影響ではない」と話す。「都心部の価格が高いところでは、地価の伸び悩みがみられる。この地点もその一つ。伸び悩みの要因のひとつが建設コストの上昇」とした。
 都心・駅近の好立地で単価が高いところの上昇率が鈍化する「伸び悩み地点」が目立ち始めた今回の基準地価。一方で、そうした場所に比較的近いところで、割安感を見出された地点の人気が高まった。

◎単価の安かった八丁堀オフィス街が上昇
 25年基準地価の商業地の変動率上位順位をみると、大手半導体メーカーの工場進出関係(北海道千歳市)、インバウンド需要(白馬、高山、浅草)などに混じり、東京都中央区湊1丁目のオフィス街「中央5―23」が+25・0%の非常に強い上昇率で8位に入った。JR・東京メトロ八丁堀駅に近い地点で、周辺に話題となるような大型オフィスができた場所ではない。国交省は「中央区の中では単価としては安いところ。東京駅など中心部に近い利便性の高いところから、賃料含め見直されてきている」と説明した。オフィス中心の地点がこのランキングに入ったのは、21年に大規模再開発で上昇した「福岡博多」(1~2位)以来となった。
 住宅地の変動率上位トップテンも、北海道や沖縄のインバウンド需要が強い地点が上位を占めた。そのなかで、茨城県つくば市の「つくば―36」と千葉県流山市の「流山―4」は、子育て環境の整備が進み人気が高まった地点。
 つくばエクスプレス沿線の住宅地は、旺盛な住宅需要から地価は近年高い上昇を見せている。特に区画整理が済んだ地域は、非常に住宅需要が旺盛だ。「つくば―36」は+19・6%(+19・2%)の上昇。従来からの割安感もあり、3年連続で茨城県1位となった。「流山―4」は+17・9%(+13・3%)の上昇。つくばエクスプレス流山おおたかの森駅から、東武野田線で1駅次の初石駅に近い地点。おおたかの森は子育て世帯に人気が高く、その理由のひとつが流山市の「送迎保育ステーション」の取り組み。駅ビル内の専用施設を拠点に、保育園への送迎を行うもの。こうした施策が子育て世帯の人気を呼び、おおたかの森エリアへの流入増加が続いた一方で、駅周辺では住宅に適した土地が減ってきた。
 それでも高い需要が続いたため、つくばエクスプレスに交差する東武野田線に需要がにじみ出し、初石駅の住宅地人気が高まった。「流山―4」は、住宅地上昇率で東京圏1位となった。近傍の「流山―14」は+15・7%(+10・4%)で東京圏住宅地上昇率6位、「流山―16」は+15・8%(+11・2%)で同5位と、周辺の地点も軒並み力強い上昇を示した。

2025.09.26