不動産私募ファンド市場規模38・6兆円
―ARESと三井住友トラ研、増加率10%に
不動産証券化協会(ARES)と三井住友トラスト基礎研究所は、「不動産私募ファンドに関する実態調査」の結果を公表した。6月末時点で不動産私募ファンド(私募リートなど含む)の市場規模は運用資産額ベースで38・6兆円と推計。前回調査した昨年12月末から約3・6兆円増え、増加率も前回の4・8%から10・1%に高まった。今年上期は日銀によるマイナス金利解除なども影響し、事業会社が売却と資金回収を急ぐ機運が高まったことで、資産規模が膨らんだ運用会社が増えたと増額の要因を分析している。
この調査は三井住友トラスト基礎研究所が03年に始め、22年からはARESと合同で行い今回で38回目。今回の調査は6月末基準で7、8月に実施し、回答者数は93社、有効回答率は57・1%だった。調査では「住宅」と「ホテル」への投資額を増やす傾向が続き、「オフィス」への投資も国内・海外投資家ともに復調した。今後注力したいアセットは住宅が21%と首位で、次点以下はオフィス、ホテル、物流と続く。
上期に物件を取得したとの回答比率は74%、売却したとの答えは38%。資金調達環境はエクイティ、デットともに調査時点で良好だったと指摘している。回答した企業が運用している私募ファンドの数は合計1千本超と増加傾向。それらの投資対象は金額ベースでオフィスが37%、住宅21%、商業15%、物流13%、ホテル6%など。向こう1年以内に組成する予定のファンドは「コア」が6割超と最多だった。日銀が3月にマイナス金利を解除し、YCCを撤廃した影響で投資方針が変わったとの回答は16%にとどまった。ただ今後、10年国債の金利が定常的に1・0%を超える状況になれば投資方針を変えるとの声が33%に上った。
2024.09.27