異次元の金融緩和が不動産市場に好影響
―三菱UFJ信、10年以降の政策を考察
三菱UFJ信託銀行は、日本銀行が包括的な金融緩和政策を行った2010年以降の不動産市場のレポートを公表した。ゼロ金利、国債の買い入れに加えてETFやJリートの買い入れも行い、16年からマイナス金利や長短金利操作(YCC)へと金融緩和は進展。市場に流入する資金が増えて実体経済の回復を待たず、価格上昇や取引拡大で市場に好影響になったと分析した。
不動産市場への影響は、長期金利と不動産投資利回り(キャップレート)の2点に表れたとする。長期金利が低下しながら16年頃までイールドスプレッドを5%近くで保ち、不動産価格は上昇。その後、不動産価格の上昇が長く続いたことから不動産投資への抵抗感が薄れてイールドスプレッドは4%近くに縮小した。加えて、日銀によるJリートの買い入れは、21年に約1150億円と活発になり、投資口価格の安定的な上昇や不動産市場全体の価格上昇につながったとする。
10年以降は日銀からの大量の資金供給で、不動産業向け貸出は、23年末に100兆円を超えて10年末の約1・7倍。住宅ローンの貸出残高も23年3月末に216兆円と11年3月の約1・2倍に拡大。不動産市場の高い流動性を維持しつつ活性化したとする。また、金融機関から私募リートを含むエクイティ投資も増加。一方で、為替相場の影響は否定的とみている。
今後の日銀は、金融の正常化へ慎重に政策変更を進めるとみて、マーケットの悪化はただちに起きないとする。ただし、懸念として、Jリートの買い入れ終了が投資口価格を低迷させ、不動産価格が下落に向かう可能性や、金融機関のエクイティ投資が利益確定やリスク資産の縮小で、不動産関連の有価証券の売却などが増加して取引の需給バランスを崩す可能性を指摘した。
2024.04.26