Jリートの運用成果は二極化へ

―金利上昇下におけるJリートの不動産取引

 三菱UFJ信託銀行は、金利上昇下におけるJリートの不動産取引に着目するレポートを発表した。足元で軟調な投資口価格が続くJリートは、同信託行の見立てによれば2024年も増資による物件の取得は困難である可能性が高い。これにより、資産入替え取引の増加や、売却益を出して利益還元を行う戦略が従前より目立つ見通し。Jリート各社は、スポンサーであるデベロッパーの開発力や金融機関の信用力を強みとして資産規模を拡大してきた。同レポートは、不動産のキャップレートが上昇しない現在、スポンサーからの取得が増えることで運用成果が二極化する可能性があると指摘する。

 同レポートによれば、2023年におけるJリートの不動産純取得額は、前年比+26.8%の7493億円。ただし、増加幅が大きかったホテルを除けば、取得額は前年比マイナスとなっている。

 Jリートの取得が進まない背景の1つは、長期金利の上昇を受けて投資口価格が下落したことにある。Jリートの投資口価格は金利上昇をストレートに織り込み、同信託行作成のグラフでは2022年以降、予想分配金利回りは上昇してきた。また、投資家が求めるインプライド・キャップレート(以下、ICR)は上昇したが、実物不動産市場のキャップレートは横ばいからやや低下傾向にある。実際、不動産純取得額が最も減少した物流施設特化型リートでは、2022年以降ICRが0.9%上昇した一方、不動産市場のキャップレートは逆に0.3%低下していた(同信託行調べ)。Jリートがなぜ長期金利上昇をストレートに織り込んだのかについて、同信託行は、Jリートの特徴である長期・固定金利というローン調達方法の影響が大きいと述べる。

2024.03.29