観光復活、相次ぐホテル・コンドミニアム

―地価高騰も要因、今後は主要リゾート地で

 コロナ明け、観光復活を背景に、ここにきて相次いでいるのが「ホテルコンドミニアム(ホテル分譲)」である。不動産会社などがホテルを開発し、客室を分譲販売する。このほど、沖縄と箱根で竣工・稼働開始した施設は、全室を完売。現在、軽井沢や白馬でプロジェクトが進行中のほか、大手不動産会社、大手ハウスメーカーなどが新たに事業参入を表明している。

 ホテルコンドミニアムとは、不動産デベロッパーなどの事業主がホテルを開発し、家具・備品付きで客室を分譲するもの。購入したオーナーは事前予約でトップシーズンでも利用できる一方、利用しない期間は客室として貸し出し、賃貸収入を得ることができる。沖縄の稼働物件の例では、表面利回りでおよそ3~4%。管理費や固定資産税などのランニングコストを差し引いても2~3%にはなる。「別荘はほしいが維持・管理の手間なく気軽に利用したい」「別荘を持っていてもあまり利用しないため管理費負担を軽減したい」といったニーズに加え、資産の分散、節税対策としての購入もみられる。

 ここにきて相次いでいるのは、コロナが明け、観光が復活したほか、地価や工事費の上昇など、都内不動産価格の高騰も要因とみられる。マンションはファミリータイプであれば70~80㎡がメイン。これに対し、ホテルコンドミニアムは、多くがリゾートエリアに立地するうえ、広さは50㎡程度が多い。一方でリゾートホテルの客室は30㎡程にとどまるため、開発総コストを抑制でき、かつホテルとして競争力ある商品を供給できる。

 通年稼働可能な沖縄エリアから本格化したホテルコンドミニアムだが、近年、北海道・ニセコで外資の取り組みが目立ち、箱根や軽井沢にも広がりをみせている。今後は、那須や熱海、草津、妙高など、主要なリゾート地でのプロジェクトも見込まれる。

 商品のバリエーションも進むとみられる。一つはインバウンドをターゲットとした商品展開。ニセコに続き、白馬でもインバウンドを中心とするスキーニーズに応えるプロジェクトが進んでいる。また、現在は数少ない5つ星ホテルによるホテルコンドミニアム展開も予想される。土地・工事費が値上がり、利回りが取りにくくなったいま、利用価値が重視される方向にある。コンセプトやターゲットなど、どういったホテルコンドミニアムとするのかが問われてくる。

2024.03.01