不動産セキュリティ・トークン市場が拡大

―三菱UFJ信託、DREAMの初号STで協業

 三菱UFJ信託銀行は、ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント(DREAM)が手掛ける学生レジデンスを対象とした不動産セキュリティ・トークン(ST)について、募集と発行の完了を発表した。同商品は、三菱UFJ信託が筆頭株主を務めるProgmat社が運営するブロックチェーン(BC)基盤である「Progmat」(プログマ)を活用して資金の調達が行われた。現在、不動産STの市場は拡大しており、2023年12月末時点で、累計694億円を発行した。今後、新たなアセットマネージャー(AM)の参入でさらに市場は拡大すると見られる。

 三菱UFJ信託は、Progmatを用いた本STの発行・受益権原簿管理および秘密鍵のカストディ機能を提供する。Progmatを活用した公募事例としては20例目となり、原簿管理対象資産残高は約1026億円となった。また、Progmatは同行が開発し、現在はみずほ信託銀行を始め7社が参画する。現在、不動産ST発行総額に対してBC基盤のシェアは、Progmatが64%を占めており、市場をリードしている。

 「DREAM・リアルティ・トークン-Residence1-」は、DREAMが不動産ST市場でAMを務める初めてのケースとなる。本STの裏付け資産となる投資対象不動産は、「エスリードカレッジゲート長瀬」(大阪府東大阪市小若江1-2-5)、「キャンパスフォレスト志村三丁目」(東京都板橋区志村3-13-7)、「リビオセゾン亀有」(東京都葛飾区西亀有3-27-22)の学生レジ3物件、鑑定評価額は計76億7000万円。発行口数は3500口で、発行総額は35億円。1口100万円から購入できる。運用期間は原則7年間。運用開始から3年が経過した後は、AMの判断で満期前に売却、償還の場合もあり、3年間を限度として運用期間を延長する場合もある。取扱会社は大和証券。

 不動産STは、不動産投資がプロの機関投資家中心の現状から、個人投資家にもより取り組みやすい投資機会の創出を目的としている。またJリートとは異なり、対象が1物件から数物件で投資家にとって目に見える商品設計となっている。そのため、現物不動産投資に近い実感を得ることができる利点がある。現在、不動産ST市場への参入機会を伺うAM会社は多い。一方で、市場への参入は基本的に第一種金融商品取引業に位置付けられ、開示義務を伴う。そのため、大きなコスト負担や人的リソースを割けるAMは限られる。DREAMで6社目となり、障壁は高いが今後さらなる新規参入が進めば、ST市場は多様化していくとみられる。

 昨年12月には、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)がSTの取扱いを開始した。異なる証券会社間のSTの購入が可能となる予定で、投資家間での売買もできることから、幅広く個人投資家の取引参加が見込まれる。市場の拡大に合わせ、より一層、売買の利便性や透明性の確保が期待される。

2024.03.01