人材の確保と育成方法が課題
―金融庁、サステナブルファイナンス有識者会議を開催
金融庁は、サステナブルファイナンス有識者会議を開催した。同会議は、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて「経済と環境の好循環」を作り出すため2020年に設置された。新たな産業・社会構造への転換を促すには、持続可能な社会を実現するための金融、すなわちサステナブルファイナンスの推進が不可欠である。同会議はそうした意識の下、現在まで3度にわたって報告書を提出した。今後、2024年6月までに、サステナブルファイナンスを扱うマーケットのインフラ整備や、アジアを含む世界の脱炭素の加速などについて議論を行い、4度目となる報告書を取りまとめる方針だ。
今回の議論では、サステナブルファイナンスを扱える人材が不足している現状を踏まえ、いかにして足元で取組みを推進できる人材を確保するか、さらには将来をけん引する人材を育成するかについて話し合われた。人材と求められるスキルについて、金融機関や生命保険業界等での取組みを紹介するとともに、どういった育成手段が有効かについて検討された。
サステナブルファイナンスの分野は、正解が1つではなく、基礎基本を応用につなげることが非常に難しいとの指摘があった。知識のみがあればよいというものではなく、柔軟に情報をアウトプットできる力が重要となる。金融機関等でサステナブルファイナンスに従事する職員は、多角的な意見を顧客にきちんと提示できる力も求められるからだ。そのためには、サステナブルファイナンスについて学ぶ段階で、正解を限定しない教育が必要となる。
教育分野では、中等教育や高等教育において学びを取り入れることが求められているものの、実現には不透明な部分が多い。金融庁や環境省に加え、文部科学省も関わる横断的な連携が必要なためだ。そこで、行政が主体となる取組みと合わせて、民間レベルでの取組みも非常に重要となる。民間企業の取組みでは、その内容や、セミナーなど教育機会の存在について認知される機会が不足しているという見解も聞かれた。仮にそれぞれの業界や分野で同じような取組みが行われれば非効率的であり、相互に情報を共有し合う必要がある。それぞれの取組みが統一されることで、より効率的で体系立った取組みとなる。サステナブルファイナンスは喫緊の課題であるため、国民すべてが理解を共有できる仕組み作りが期待される。
また同会議では、サステナブルファイナンスに実務で携わっている若手人材にも、議論に加わってもらう場を設けたいとした。世代ごとのサステナブルファイナンスに対する認識についてヒアリングを行い、今後の展望と可能性を探ることで同会議の議論の参考にしたいとしている。
このほど行われたPRI年次会議では、岸田首相がサステナブルファイナンスの取組み強化やサステナビリティ投資商品の充実に言及。実現のためにも、継続的な人材育成の仕組みづくりが急務となる。
2023.12.1