首相らがグローバル投資家と意見交換
―Japan Weeksイベントでラウンドテーブル
ブラックロックはグローバル投資家等と日本政府関係者等によるラウンドテーブルを開催した。同イベントは、国際金融センターの実現に向け、東京都や日本証券業協会等がJapan Weeksとして各種イベントを開催したうちの1つ。開催期間中(9月25日~10月6日)には集中的に海外金融事業者を招致し、岸田首相が参加したラウンドテーブルには、国内外から27機関・総資産規模約3300兆円を抱えるアセットオーナーや運用会社代表者が参加した。
金融庁によれば、ラウンドテーブルの参加者は、海外アセットオーナーとして、シンガポール政府投資公社、フューチャー・ファンド(豪の政府系投資機関)、カタール投資庁、国連合同職員年金基金等、13機関。海外アセットマネジャーとして、ブラックロック、ブラックストーン、ブルックフィールド、マッコーリー等、8機関。国内機関からは、GPIF、三井住友トラスト・ホールディングス、日本生命等、6機関が参加した。
冒頭の挨拶で、主催者であるブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者が、日本の投資市場への高い期待を表明したことに続き、参加者からは、政策の安定性やファンダメンタルズへの信頼、金利環境を含めた経済環境を評価する声が挙がった。特に期待する投資先としては、AIやロボット、バイオサイエンスなど先進的技術分野のほか、グリーンへのトランジション分野、スタートアップ企業らへのPE投資などが挙がった。「これまでのアンダーウェイトな姿勢を是正したい」、「さらに投資を拡大する」といった積極的な姿勢表明も見られた。
一方、課題には、2100兆円超の資産を保有する「個人投資家へのアプローチが十分ではない」という指摘が挙がった。具体的には、「高等教育の早期から金融リテラシーを身につける教育が必要である」という意見が出された。機関投資家の中でも、多額の資金を抱える年金運用機関に対しては、現状の何倍も収益が上がる可能性を指摘。「+1%程度の収益率を目指して、リスクテイクを行ってはどうか」という助言があった。
同イベントの締めくくりでは、岸田首相が発言。資産運用業の改革に取り組み、日本独自のビジネス慣行や参入障壁を是正する姿勢を明示した。各種規制の緩和や「資産運用特区」の創設に加え、世界の投資家ニーズに沿った改革を進めるため、来年は「資産運用フォーラム」を開催することとし、そのための準備委員会を年内には立ち上げると述べた。世界の市場をけん引する投資家から定期的に意見を募り、日本を魅力ある市場にしていく狙いだ。グローバルな観点を取り入れ、個人および機関投資家の資金を動かす施策が打たれれば、不動産投資市場への影響は大きい。動向を見通した市場整備の必要性に加え、プレーヤーは国内状況とグローバルスタンダードを冷静に分析した投資設計が求められていく。
2023.11.2