新たな経済成長への軌道を描く
―金融庁が2023事務年度 金融行政方針を発表
金融庁は、「2023年事務年度 金融行政方針」を公表した。エネルギー価格の高騰や円安、人手不足により厳しい環境に置かれる事業者も多いなか、金融庁は4本の柱を中心に方針を打ち出した。まず、事業者の実状に応じた支援の徹底、次に資産運用立国の実現に向けた金融市場の整備、そして金融システムの安定・信頼性の確保、最後に金融行政の高度化である。同庁は、市場・経済がグローバルに相互連関していることを踏まえ、国内事業者への幅広い支援のほか、金融機関による健全性維持の強化等に対してモニタリングを実施。他方、政府が打ち出す「資産所得倍増プラン」に対しては、新NISA制度や金融経済教育推進機構立ち上げなどで応じていく。
金融庁は、コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したことを受け、新たな経済成長への軌道を見通す方針を示した。特に、世界的な金利上昇や欧米における銀行セクターの混乱等、金融経済の動向についてはグローバルな観点から影響を考慮する必要性を強調。経済成長の実現および社会課題解決を支えるため、金融システムの安定と信頼性をいかに確保するかが大きな課題となっている。一方、国内事業者に対して金融機関はコロナ禍で資金繰りを中心に支援してきたが、今後は実情に応じて資本性劣後ローンやREVIC等を活用した支援の実施を促していく。
国内外の金融経済情勢を鑑みた金融機関の経営基盤強化、および顧客本位の業務運営の確保など金融市場に対する信頼性について、同庁はオンサイト・オフサイトの両手法を組み合わせた深度あるモニタリングで確保する姿勢を堅持する。そのうえで、「成長と資産所得の好循環」の実現に対し、関連法案の提出や市場整備など具体的な施策が動き出した。
2024年1月に制度開始予定の新NISA制度では、内容の周知や制度のブランド化に努める一方、投資枠の再利用制度を悪用した金融機関による回転売買に対して、同庁は監視を強化するうえ、悪質な場合は厳しく対応するといった方針を公表するなど、健全な活用促進を図る。また、これまで遅れを指摘されてきた金融経済教育については、「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」を2023年通常国会に提出し、参議院において継続審査となっている同案の成立・施行を前提に、「金融経済教育推進機構」を2024年春に設立、同年夏に本格稼働を目指していく。同機構は、企業の雇用者向けセミナーの支援、教育活動の抜本的拡充を担う。
また、金融資本市場のさらなる活性化へ導くため、グローバル投資家の期待に応えるコーポレートガバナンスに優れた企業群の見える化や、非財務情報の開示充実に対する施策を進めていく。他方、効率化の観点からは、前述の法案の成立を待って東京証券取引所と連携し、四半期決算短信の見直しを進める。そのほか、サステナブルファイナンスの推進など、持続可能な社会を目指し、市場の拡大と信頼性の両立を支える仕組みを構築していく方針だ。
2023.09.29