賃貸住宅市場はAPACでは数少ない成熟した投資市場
―CBREが日本の住宅投資市場の現状と魅力を再確認
CBREは、「日本の賃貸住宅市場―少子高齢化でも需要が見込める理由」と題したレポートをまとめた。日本の賃貸住宅市場が今後も有望な投資対象であることの背景について、人口動態、家計、住宅市場、消費者の傾向から考察し、日本の住宅投資市場の現状と魅力について改めて確認した。
日本の賃貸住宅市場は、アジア太平洋地域では数少ない成熟した投資市場で、国内外の様々な投資家によって物件が取引されている。そして、賃料はオフィスなどと比較して安定している。すなわち、日本の賃貸住宅は市場規模と流動性、キャッシュフローの安定性などの観点から事業用不動産の投資家にとって魅力的なセクターであるとした。
事業用不動産としての「賃貸マンション」は、近年の投資額はオフィスに次ぎ、物流と並ぶ規模で、日本の事業用不動産投資市場において主流のアセットタイプと断言。収益が安定していることや、全国の主要都市で投資が可能なことが魅力とした。賃貸住宅は、物件の規模が他のセクターに比べて小さく、価格も数億から数十億円と事業用不動産としては少額なものがほとんど。そのため、日本の総投資額に対して住宅が占める割合は、大規模金融緩和が始まった2013年以降の平均で13%(4840億円)となっており、全体の46%を占めるオフィス投資額(1.7兆円)を大きく下回る。しかし、近年の住宅投資は、取引単価が大型化する傾向にある。ポートフォリオ取引が増加していることが理由で、住宅投資額に占める価格100億円以上の取引は2014年以降上昇しており、2022年は全体の61%を占めた。
日本の住宅投資市場における海外投資家の存在感が増していることも紹介。住宅投資を牽引する投資家層は、2013年以前はJリートだったが、GEが住宅ポートフォリオを売却した2014年以降は、国内投資家に比べて大型ポートフォリオに積極的な海外投資家にシフトしている。これらの海外投資家は生命保険会社などの機関投資家が中心。日本の住宅投資額に占める海外投資家の割合は2017年に過去最高の73%、2022年では57%となっている。
海外投資家の多くが日本で住宅投資を選好する背景は主に①収益の安定性、②投資家層に厚く、出口戦略を描きやすい③アジア太平洋地域では、成熟した住宅投資マーケットが限られる――を挙げている。
レポートではその他、住宅特化型リートはコロナ下でも安定的に成長していること、賃貸住宅に対するレンダーの融資姿勢は緩和傾向が続いていること、日本の住宅投資の魅力は海外と比べて高い利回り水準を維持していることを紹介している。
2023.09.01