YCC柔軟化で不動産価格の影響限定的
―三菱UFJ信託、市場が想定する範囲内
三菱UFJ信託銀行は、7月下旬に日本銀行が決定したイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化による不動産価格への直接的な影響は限定的とするレポートをまとめた。長期金利の変動幅の上限について、事実上は上限1・0%への引き上げを行い、短期金利のマイナス解除は行わなかったため、レポートでは「市場の想定の範囲内」と指摘した。今後の不動産市場は、海外投資家の動向の影響を受けやすい状況が続く可能性があると分析する。
レポートでは、長期金利の変動幅を上限1・0%と上昇したことについて「既に日本国債市場で(フォワード金利に)織り込まれていた水準」とみる。足元では、イールドカーブの歪みはほぼ解消したとして、今後の長期金利の上昇については「マイナス金利政策の解除を含め、利上げの織り込みが強まっていくことが条件」とみている。ただし、日銀が政策修正と同時に公表した展望レポートでは25年度のインフレ率も引き続き2%を下回る見通しであったことから、短期金利の利上げは「まだだいぶ距離がある」と予測。
不動産市場では、コロナ禍以降はJリートによる不動産取得の減少に代わり、海外投資家の積極的な取得姿勢が目立ったとみている。22年以降は米国系の投資家に慎重姿勢が出てきた一方、アジア系投資家は増加した。今後については、Jリートの投資口価格が長期金利の上昇から軟調に推移していることを受け、海外投資家の慎重姿勢が強まる場合には、「国内企業にとって不動産取得の好機にもなり得る」と見通す。なお、日銀の植田総裁が会見で不動産価格の上昇などに触れていることから、「不動産市場の動向が金融政策に影響を及ぼす可能性も否定できない」とした。
2023.08.25