マンションの解体費用把握へ実態調査

─国交省、老朽化の先の寿命見据えた議論

 国土交通省は、将来必要になる分譲マンションの解体費について実態調査に乗り出す。どんなに適正な管理を行っても、マンションにも寿命の時期は到来する。築40年超の高経年マンションが増えるなか、将来の解体を見据えて解体費用の積立を始める管理組合も出てきたが、まだ大多数のマンションでは解体は認識されていない。国交省は、確保が必要な解体費の相場を把握し、解体費確保の手法を探る。

 老朽マンションの再生には建替えという選択肢があるが、実現事例はまだ少ない。22年4月1日時点で、建替え事例は270件にとどまる。一方で、建替えで必要になる区分所有者の平均負担額は増加傾向にある。国交省の調査によると、90年代までは340万~380万円程度だったが、17~21年には1941万円まで増えており、費用面のハードルは上がっている。建替えられずにマンションが寿命を迎えた場合、区分所有者が除却することになる。国交省の有識者検討会では「横浜市でシミュレーションしたところ、土地を売却して解体資金を確保できないマンションが約1割存在し深刻。新築マンションでも解体まで見据えた計画が必要」と指摘する声が委員から上がっていた。

 マンションの解体費は、相場や算出に当たっての指標が存在しない。国交省が建替え84事例を分析したところ、解体費の戸当たり平均は230・5万円だった。国交省は実態調査で解体費を把握し、マンション関連の各種指針への反映を検討する。解体まで見据えた、通常の長期修繕計画より長期の「超長期の修繕計画」も併せて検討する。積立方式や保険制度も含めて、解体費用を確保する手法も議論する。

2023.08.09