国税庁、マンション相続税評価を適正化

─戸建て並みの水準に、課税の公平性確保

 国税庁は、マンションの相続税評価方法の見直し方針を固めた。マンションの相続では、相続税額計算のベースとなる相続税評価額と、実際の市場価格(時価)が大きく乖離するケースが把握されてきた。申告税額をめぐり国税当局と訴訟になるケースもある。実態を踏まえ国税庁は、評価方法を定める財産評価基本通達を改正し、24年1月からマンション用の新たな評価額補正方法を導入する考え。

 現行のマンション(一室)の評価額は、建物と敷地の評価額の合計。建物には固定資産税評価額、敷地には「敷地面積×共有持分×㎡単価(路線価等)」を用いる。評価額が市場価格と乖離する要因は複数ある。建物の評価額は1棟全体の再建築価格をベースに算定されるが、市場価格には建築価格に加え「建物総階数」「所在階」も考慮される。評価額に「築年数」の反映が不十分なケースもある。また、敷地は共有持分で按分し㎡単価を使って評価されるため、室数が多く一室も狭くなる高層マンションであるほど、立地条件が良くても評価額が市場価格より低くなる。

 国税庁はこれらの要因分析をもとに、新たな評価額の補正ルールを設ける。築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度の4指数を用いて市場価格を算出し、評価額が市場価格を大きく下回る場合に、評価額を「市場価格の6割」まで引き上げて補正する。  国税庁の有識者会議(23年1月開始)の資料によると、相続税評価額と市場価格の乖離率は、戸建ては平均1・66倍、マンションは同2・34倍。新ルール下でのマンションの乖離率は1・67倍と試算されている。戸建て並みの水準となり、課税の公平性を確保する見直しとなる。

2023.07.07