デジタル地域通貨とデータ連携基盤を接続
―みずほ銀とTISが会津コイン提供開始
みずほ銀行とTISインテックグループのTISは、地域課題解決型デジタル地域通貨サービス“会津コイン”の提供を開始した。同サービスは、TISが開発したスマートフォンアプリ“会津財布”と、みずほ銀が提供するチャージ型コインサービス“ハウスコイン”を組み合わせてカスタマイズしたもの。みずほ銀がハウスコインを地域通貨として提供するのは初めて。キャッシュレス決済導入に伴う店舗事業者の課題を解決するとともに、地域への決済データ還元を実現し、今後地域生活に資するサービスを拡充していく。なお同取組みは、福島県・会津若松市の「複数分野データ連携の促進による共助型スマートシティ推進事業」の一環で、同市が提供するデータ連携基盤と接続する決済手段となる。
“会津コイン”は、店舗事業者の売上高ごとに加盟店手数料の上限を設定し、さらに売上高の受取りは当日でも可能なシステムを組むことで、事業者にとって高い利便性を実現した。利用者である市民に対しては、購買履歴などのデータ共有について同意を求める。各データの連携により、単なるキャッシュレス決済機能だけでなく、会津地域での公共料金や会費の収納、地域振興券や地域ポイントの付与など多様な利用シーンに対応して、会津広域地域への拡大を目指す。
みずほ銀とTISは、同市の「スマートシティ推進事業」を押し進めるために2021年に設立された一般社団法人AiCTコンソーシアムのワーキンググループにて協議を重ねてきた。“J-Coin Pay”を全国で提供するみずほ銀は、実証実験として“会津財布”に実装し、地域の決済額を可視化した。そのほか、市民向けイベントや勉強会等を開催することで現状を把握した結果、加盟店手数料の負担と、売上高受取りまでのタイムロスでキャッシュフローが悪化することを懸念し、導入をためらっている状況が明らかとなっていた。
地域通貨は2000年頃から紙媒体での発行が各地で見られたが、維持・管理コストが大きく、不正利用防止には弱点も見られ、継続的な利用には困難が多かった。こうした欠点をデジタル技術が補う形式が再度注目を浴びている。地域通貨導入のメリットは、資金が地域経済内で循環することで地域活性化を促すことにある。一方、決済手段としては大手QRコード決済アプリがすでに複数台頭しており、利便性の面では劣ってしまう。さらに、収益性の面では多くが加盟店からの決済手数料を収益源としており、店舗側の負担から利用が広がらず事業の継続が困難となる例もある。
課題を乗り越えるのが、機能を地域通貨決済単体とせず、地域データ基盤と結びつけることで、複数サービスを含むスーパーアプリの1機能とする案。TIS担当者は、「購買履歴から、市民の興味があるセミナーの開催やヘルスケアサービス提供など、アプリを活用した案は様々考えられる」と述べた。キャッシュレス決済が広く普及するなか、大手決済アプリの利便性と差別化を図り、使い分けの利点を見いだせれば地域振興を担う一助となる可能性は大きい。
2023.04.28