「社会的効果を生む不動産」を創出へ

─国交省、企業と投資家との共通言語に

 国土交通省は、ESG投資の世界的な拡大を受けて、「S」(社会課題)の分野で貢献する不動産の基本的考え方をガイダンスにまとめた。不動産が貢献する社会課題に段階分けと類型化を行い、ポイントを整理。社会的インパクトを生む不動産の創出に事業者が取り組みやすくする。同時に、ガイダンスは投資家や金融機関による投資判断での活用も見込んでいる。

 ガイダンスは、「ヒト・地域・地球の課題解決に取り組むことで社会的効果(社会的インパクト)を創出し、地球環境保全も含めた社会の価値創造に貢献するとともに、不動産の価値向上と企業の持続的成長を図る不動産」を、「社会的インパクト不動産」と定義した。ただ、不動産が社会的インパクトを生むという認識はまだ一般的ではない。ガイダンスは、企業と投資家・金融機関との対話(資金対話)と、企業と利活用者・地域社会との対話(事業対話)が不可欠と説明。対話の際の共通言語がガイダンスとなる。

 まず不動産が関わる社会課題を「安全・尊厳」「心身の健康」「豊かな経済」「魅力ある地域」の4段階に分け、次に段階ごとに対応する社会課題を14課題に整理した。課題に取り組むため、全体的なビジョンの検討から始める場合には、以下の手順で取り組むことが推奨されている。①ビジョンの検討②インパクトや受益者を検討③受益者にもたらされる便益「アウトカム」の検討④アウトカムを創出するにはどのような状態を目指すべきか検討⑤そのためにどのようなサービスをどう提供するか検討─の順としている。

 国交省は、ガイダンスにより、社会課題に対応した不動産ファンドの組成・拡大や、評価制度の充実を目指す。

2023.04.07