国民生活センター、原状回復トラブル事例調査

─賃貸の相談で毎年最多、民法改正周知

 国民生活センターは、賃貸住宅の原状回復に関する相談について、トラブルの傾向をまとめた。同様の調査は10年ぶりの実施。20年の民法改正で原状回復や敷金の扱いが明確化されたことによる影響の調査が目的。また、引っ越しシーズンの2~4月に相談が増えることもあり、トラブル防止の周知も狙っている。

 同センターには毎年3万件以上の賃貸住宅に関する消費者生活相談が寄せられている。なかでも原状回復の相談は最も多く、毎年1万3000~4000件あり、全体の約4割を占める。21年度は賃貸住宅全体の相談3万5800件のうち、原状回復に関する相談は1万4109件あった。原状回復に関する相談の契約当事者の年齢は30歳代が3675件で最多。20~40歳代合計では全体の7割を超える。相談内容は「想定より高額な請求を受けた」「普通に生活してついた汚れやキズの修繕費用を請求された」「入居前からあったキズに修繕費用を請求された」といったものが多かった。

 20年4月1日施行の民法改正により、借主が負う原状回復義務には、「借主の責任によるものではない損傷等や通常の使用で生じた損耗、年月の経過による損耗・毀損(経年変化)」は含まれないことが明確化された。また、敷金は、契約が終了し賃貸住宅が返還された時点で貸主に返還債務が生じること、敷金から差し引かれるのは未払い家賃や原状回復費用であることも改正民法に明記された。ただ、原状回復・敷金は、両規定とも特約で変更することができる。

 同センターは、新たに賃貸住宅に入居する人向けに、契約書類の禁止事項や退去時の費用負担に関する事項を確認すること、入居時のキズや汚れを記録に残しておくことなどを推奨している。

2023.02.10