区分所有法の改正、法制審議会に諮問
─葉梨法務相が発表、建替え要件緩和へ
葉梨康弘・法務相は2日の閣議後会見で、12日の法制審議会で区分所有法の改正を諮問すると明らかにした。分譲マンションの建替え要件(5分の4以上賛成)の緩和や、所在不明の区分所有者を決議の分母から除外する仕組みの創設などを検討する。前回の区分所有法の改正は02年。20年ぶりに、議論は改正へ向けた正規ルートに入る。
次の法改正の大きなテーマとなるのは、老朽化した区分所有建物の管理と再生の円滑化だ。適正な管理を行いたくてもできない状況に陥った老朽マンションは少なくない。その要因になっているのが、相続などで区分所有者が所在不明になるケース。区分所有者が所在不明になると、決議では反対者と同じ扱いになり、管理についての円滑な決定を阻害する。法制審では、所在をつかむ手がかり無しの「所在等不明区分所有者」であることを公的機関が認定し、決議の母数から除外する仕組みの創設を議論する。この仕組みは全ての決議で使えるようにする方向で検討に入る。
所有者不明の専有部分の財産管理に、第三者が関与できる仕組みも新設する方針だ。所在等不明区分所有者が出ると、その専有部分は適切な管理が行われなくなり、建物管理に支障が出るおそれがある。所在等不明区分所有者の専有部分の管理に特化した新たな財産管理制度を設け、中立的な立場の第三者を裁判所が選任し、売却までできるようにすることを検討する。
建替え決議の5分の4以上賛成という要件は、満たすのが容易ではなく、必要な建替えが迅速に行えないという課題があった。そこで、「3分の2」や「4分の3」などの多数決割合を単純に引き下げる案に加え、耐震性不足など一定要件を満たす場合に引き下げる案などを検討する。また、多数決割合を全員合意で緩和することを認める案も検討対象にする。少数反対者の利益保護についても議論する。
既存躯体を維持しながら専有部分を含む建物全体を更新する一棟リノベーションは、技術的には可能になっているが、この場合は全員合意が必要で、事実上困難だ。こうした既存躯体を維持した一棟リノベーション工事が、建替えと同様に多数決でできるようにする仕組みも議論する。
区分所有法の改正とともに、被災マンション法の改正も諮問される。被災したマンションを建替えたり取り壊して売却する時は、通常のマンションと同様に5分4要件が適用される。これを「3分の2」に引き下げる方向で検討する。また、大規模一部滅失時の敷地売却などの決議は、現行法では1年以内に行うよう定められている。被災時に1年は短すぎるという要望が多いことから、3年程度に延ばすことを検討する。
2022.09.09