重要施設周辺の土地売買は事前届出制に
―重要土地法、売主・買主の双方に義務
内閣府は、安全保障上重要な土地の利用を規制する重要土地等調査法の基本方針案を公表した。同法は、自衛隊基地などの重要施設の周辺概ね1kmで、特に重要な区域には、土地等の取引に事前の届出を義務付ける。買主だけでなく売主も事前届出の対象としており、内閣府は不動産業界への周知を重視している。
同法は、防衛関係施設・海上保安庁施設・生活関連施設(原子力関係や自衛隊も使用する空港を想定)の周辺約1kmの区域や離島区域を「注視区域」に指定する。注視区域内は、土地・建物の所有者(氏名、住所、国籍等)と利用状況を調査し、不適切な利用には勧告・命令を行う。注視区域のうち、特に重要な場所は「特別注視区域」に指定。特別注視区域内の土地等の取引には、売主・買主に契約前の届出を義務付けた。
事前届出の対象は、特別注視区域内の土地等の売買で、賃貸借契約や相続での所有権移転は対象外。200㎡未満(建物は床面積)の土地等も対象外となっている。届出先は内閣府政策統括官(重要土地担当)。宅建業法の重要事項説明の「重要事項」に位置付け、宅建士からの説明も義務付ける。内閣府の調査によると、一般的な住宅で事前届出の対象となり得るのは、土地38.2%、建物1.1%だった。届出なしの契約締結には罰則(6カ月の懲役または100万円以下の罰金)もあるが、基本方針案は届出について「取引自体を規制するものではない」とする。
基本方針案は8月24日までパブリックコメントを募集する。売主・買主の届出の様式も示した。9月中旬に基本方針を閣議決定した後、同法は全面施行され、その後に区域指定を公示予定。公示後、どの時点の取引から届出義務の対象とするかは今後検討する。
2022.08.05