住宅各社、都のPV設置義務化案に反響
―枠組みを注視、需要減やコスト増懸念も
東京都の有識者審議会が都内の新築住宅に太陽光パネルなどPV設備の設置義務化を求める中間答申を24日に提示したことが住宅業界に波紋を呼んでいる。都は本年度内の条例改正を目指しているが、施策を商機と捉える事業者がいる一方、日照条件などの観点で実効性を疑問視する見方や、さらなるコスト負担を懸念する声も多い。ZEH対応に先手を打ってきた大手と、価格競争力を武器にシェアを広げてきた中小の事業者で受け止め方にも温度差があるようだ。
都は戸建てや集合住宅の施工者にPV設備の敷設を義務付ける方針で、罰則規定も検討している。都内での施工・供給実績が年に延床面積2万㎡を超える企業に年間総戸数の85%以上を目安に設置を求める方向だが、住宅業界には賛意や動揺など様々な反響がある。
積水ハウスと積水化学工業は新築戸建てのZEH化率が9割前後と高く、大和ハウス工業も25年度までに85%達成を目指す。販売価格も比較的高くPV設置の追加コストを吸収する余力もある。大和ハウスは「現行の取り組みを進める」、積水ハウスは「都の施策の方向性に賛同する」などと焦りの色は見られない。
一方、一部の大手や中小の事業者らには今回の措置が住宅需要に水を差すことや、収益の圧迫要因が増えることへの不安が根強い。ある企業の幹部は「売電価格が下がっていて、パネル設置の要望も減っている。本当に(条例改正を)やるのか」と驚きを隠さず、「(利回り重視の)投資用マンションにも影響がある」と指摘する。別の有力ビルダーは「住宅密集地の扱いがどうなるかが焦点になる」とした上で、屋根貸しなど新たな事業手法の検討に入ったと明かす。
審議会の委員からは、PV設備には災害時の電力利用や光熱費削減などの利点がある点を周知することや、パネルの維持管理と廃棄を含む総合的な運用を考慮することなどを説く意見が出た。東京都には、地域特性や事業者の供給体制、消費者のニーズなどを踏まえた慎重な制度設計が強く求められている。
2022.06.03