インフラファンドの市場規模は1.3兆~1.8兆円
~三井住友トラスト基礎研究所の調査結果から~
三井住友トラスト基礎研究所は、日本のインフラファンド投資市場規模の調査結果をまとめた。2020年3月末時点の資産額は1兆3000億~1兆8000億円と推計。このうちファンドからの出資分は4000億~6000億円で、残りは融資などによる資金調達。上場インフラファンドは7銘柄で約1800億円、上場インフラファンド以外で国内インフラ投資の残高が確認できた運用会社は25社以上となった。
調査は2018年から実施しており、今回が3回目。国内のインフラに投資するファンドの情報を収集し、運用会社へのヒアリングや公表資料に基づく推計で市場規模を集計した。なお、データセンターは海外ではインフラに含めるケースがあるものの今回の調査では対象外とした。
調査によると、ファンドに組み込まれた資産のほとんどは、再生可能エネルギー発電施設。中でも、太陽光発電施設が80%以上を占めると推察し、日本のインフラファンドの投資対象は、依然として太陽光偏重が続いていると指摘。市場規模は、資産額ベースで1年前に比べて約1000億円増加。このうち上場インフラファンドによる増加は約380億円。ジャパン・インフラファンド投資法人が2月に上場したことが寄与した。上場インフラファンド以外では、東京都のESGファンドを運用するスパークス・グループや、火力発電所を組み入れたファンドを運用するIDIインフラストラクチャーズなどの資産残高が大きい。
調査では、今後、注目すべきは新型コロナウイルス感染拡大の影響で戦略の練り直しを迫られる事業法人や投資家の動きと指摘。事業法人や外資系投資家の中には、太陽光発電施設を売却する動きが出てきている。一方で、大手の電力会社やガス会社といったエネルギー関連企業は、積極的に再生可能エネルギー発電施設を取得している。入札では、こうした企業にファンドが勝てない場面が続出している。また、上場インフラファンドの中には、投資口価格の低迷により、資産取得を延期する動きも起きている。国内のファンドを含めた機関投資家の投資意欲は減退していないが、他のプレーヤーの動き次第では、短期的にファンド市場における資産の積み上がりに一定の影響を与える、と見る。
一方、機関投資家の間では、インフラ投資が景気や市場の変動を受けにくい資産であることが再認識され、インフラ投資は、不動産やプライベートエクイティなどを含むオルタナティブ資産の中でも、中長期的にそのアロケーション(配分)が引き上げられる可能性が出てきたとしている。
最後に調査では、足元で各スポンサーが保有する再生可能エネルギー発電施設(開発中を含む)の合計は約1700MWあり、将来的に3000億~5000億円程度の資産の積み増しは可能な水準。これに私募ファンドを加えると、5000億~1兆円の資産の積み増しも期待できると見る。また国内では、多数の洋上風力発電事業が準備段階にあり、資産の多様化や政策の後押し次第では、インフラファンド市場規模がさらに拡大する可能性もあると見通している。
2020.10.30