三菱UFJFGが環境配慮型の物件取得で融資
私募リート向けに邦銀初、ESG投資に対応
三菱UFJフィナンシャル・グループ(三菱UFJFG)は、私募リート向けに高い環境性能の物件取得に使途を限定した融資を始めた。邦銀で初めて私募リートを対象とし展開する。ESGへの意識が高まっている機関投資家に対応する。スキームは三菱UFJ信託銀行が、三菱UFJ銀行を貸付人、私募リートを借受人とした貸出債権を信託受益権化し、投資家へ販売する。販売先は年金基金や信用金庫がメイン。私募リートは投信法規則上、投資法人債を発行できないため、グリーンボンドなどグリーンファイナンス発行による資金調達が進んでいなかった。三菱UFJFGは、信託スキームを活用し、投資家を税法上の適格機関投資家に限定し募集を実施することで、グリーン性商品による資金調達を実現した。
三菱UFJ銀が1月31日に、ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント(DREAM)が運用する私募リート「DREAM プライベートリート投資法人」に対して約20億円を融資。三菱UFJ信託銀に信託譲渡し、貸付債権を裏付けとして信託受益権を発行した。DREAMは神奈川県・平塚市で保有する物流施設の取得資金のリファイナンスに活用する。三菱UFJ銀行の担当者は「投資口価格が安定し、相応数の機関投資家が存在する私募リート業界において、今後のESGのアピールは必要不可欠になる。今後のグリーンファイナンスの広がりにも貢献していきたい」と話す。今後、DREAMはCO2の排出が少ない物件を取得する際、三菱UFJ銀からの借入金を活用していく方針。今回の融資を通じて投資家を拡大させる。なお、今回発行された信託受益権に対して日本格付研究所(JCR)は、資金用途のグリーン性と管理・運営・透明性などを総合的に判断し、最高ランクである「Green1」と評価している。
DREAMが保有する「DPR 平塚物流センター」(神奈川県平塚市新町6-15)は、ZEB Ready(空調、給湯など一次エネルギー消費量を50%以上削減できる建物)に相当する高い環境性能を持つ。BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の第三者評価機関から優れたエネルギー消費性能が認められ、BELS評価の5つ星を取得している。
現在、機関投資家の間では、社会的にESG・SDGsの概念が浸透してきたことを受け、物件への投資においても環境に配慮した取組みが重要な選別要素になると見る。直近で明確にESG商品であるかどうかで、投資の選別が行われている状況ではないが、三菱UFJ銀の担当者は「今後、投資家責任として、ESG商品に投資をしているかどうかの判断を問われる可能性はある」と見る。
2020.04.03