三菱UFJ信託銀行が信託型リバースモーゲージ
日本初、信託金によりノンリコースを実現
三菱UFJ信託銀行は、リバースモーゲージで返済リスクに備えた新商品「リバースモーゲージ信託(ゆとりの約束)」の取り扱いを始めた。利用者が契約時に一定額の信託金を拠出し、死亡時に自宅の評価額が借入金を下回った場合に、同行が組成したファンドにプールした信託金を返済原資に充てる。借り手は返済リスクを解消するのみならず、銀行側の貸し倒れリスクも解消でき、ノンリコースを実現する。信託金を活用してリスクに備える仕組みは国内初。信託型の企画・構築には、同行が強みとするファンドの組成や年金数理などに関するノウハウを活用した。対象物件は東京23区内の戸建て・マンション。マンションも対象とすることで、より契約者の幅を広げる狙いがある。
新商品の借入上限額は自宅評価額の50%、年1回見直しを行う。契約者は借入上限額の5%を信託金として拠出し、初回の借入金から差し引かれる。信託金を活用することで、借入金が評価額を超過した場合でも元利金を相続人に請求することはない。逆に評価額を下回った場合、代表相続人に清算金が支払われる。東京23区内に所在する戸建・マンション、70歳以上を対象とする。不動産の評価額は2000万円以上、限度額は1000万円以上1億円以内。適用金利は変動金利で、現時点で約3%を想定する。マンションの場合は、総戸数が50戸以上、床面積が50㎡以上、契約者と配偶者のいずれも満100歳となる年の1月1日時点で築年数が40年未満とする。借入プランを2種類用意し、毎年一定額を受け取れるもののほか、信託金を借入額の10%拠出することで初回にまとまった資金を受け取れるタイプがある。
三菱UFJ信託銀行は、日本における長寿化が進展することで、資産寿命が持ち主の寿命に届かないリスクが今後大きくなることを見込み、新たなリバースモーゲージの商品展開を検討してきた。同行が重視したのは「老後の人生をいかに豊かにできるか」だ。同行は商品の企画にあたりニーズ調査(全国65歳以上の男女、サンプル数1851件)を実施、リバースモーゲージの利用阻害要因や自宅の相続意向などを調べた。その結果、同商品の利用に躊躇する主な理由に挙がったのが「借入期間中の支払利息の発生」と「相続人や配偶者による返済負担」であり、また子どもに家を残す意向がない割合はサンプル数の約半数を占めた。この調査結果を受け、同行は潜在的なニーズ自体は高く、この2つの問題をクリアすればリバースモーゲージの普及が見込めるとし、信託型での商品タイプを構築。フロンティア戦略企画部R&Dグループ上級調査役の渡辺大介氏は、「保有している資産額に関係なく、自宅を持つすべての高齢者が充実した老後を送れるようなサポート商品を構築した」と話す。
リバースモーゲージは1980年代から日本でも取扱いが始まり、2017年時点で約50の金融機関が商品として提供している。ただ米国などと比べ普及実績は少ない。
2020.01.31