
全日が空家対策大全を策定、政策提言も
―諸経費調査し、実費弁償の原則明示を
全日本不動産協会の「全日みらい研究所」は、全日中期ビジョンにもとづく「全日空家対策大全」を策定した。会員への調査結果をもとに課題をあぶり出し、6つの提言をまとめた。空き家の物件情報を事業者に提供する仕組みの創設検討や、空き家固有の諸経費に関する国の実態調査と実費弁償の原則を明確に示すことなどを求めた。同大全をエビデンスとして、提言実現を目指していく。
会員アンケートでは180社が回答し、500を超える空き家取引に関する事例を収集。うち、26社にはメールや電話などによる追加調査を行った。空き家の年間取り扱い戸数は、8割の会員が23戸以下とし、平均は15.7戸。これに対し年間の非成約戸数は平均4.6戸で、約3件に1件は成約していない状況が浮かび上がる。売主自身が物件状況を正確に把握できておらず、仲介契約後に深刻な瑕疵が発見され解体となるケースや、遠方の売主が市場を知らず適正な価格設定ができず売れ残るケースなど、課題を指摘。残置物の問題や空き家の価格が低廉で会員が得られる報酬が労力に見合わないことなども問題提起した。
これらを踏まえ、空き家バンクへの登録段階での一定の物件情報の提供を登録者に求めることや、物件調査費用を売主が負担できない場合の自治体や国の一部支援を要望。宅建業者の報酬上限制の外にある空き家固有の諸経費に関する国の実態調査と、実費弁償の原則の市場への明示を求めた。そのほか、AIを活用した客観的で合理的な価格査定マニュアルの策定検討や、残置物処理などを専門的に担う事業者の登録システムの構築と利活用促進なども提起した。
2020.12.18