
新型肺炎が市況左右、賃貸部門の需要増
―ラサールが「20年不動産投資戦略」公表
ラサール不動産投資顧問は4日、世界主要30カ国の不動産投資市況を分析した報告書を公表した。世界的な超低金利環境や機関投資家による投資拡大を好材料として挙げる一方、負の要素として新型肺炎の感染拡大や米中通商協議の長期化、不動産価格の高騰などを併記し、今後2~3年は世界経済が緩やかに減速傾向をたどると展望。アジア太平洋(AP)地域などでは20年のトータルリターンが過去数年よりも下がると説き、投資家の安定志向が強まるなか、不動産賃貸部門が市場での存在感を増すと予測している。
報告書はラサールが年に2回公表している「グローバル不動産投資戦略」の最新版。ベースとなる市況感や論調は昨年8月に出した前回の報告書とほぼ同じ。8月の報告書では「日本を含むアジア太平洋の市場に深刻な景気後退はない」と指摘。最新版では市況が新型肺炎の収束時期に大きく左右されることを付記した。感染者が増え続ければAPを始めとする世界経済が大きな打撃を受ける可能性があることを示唆しつつも、アジア圏は人口増加や都市化の進展、中間層の増加などが景気回復の原動力となり、引き続き世界で最も高い経済成長率を保つと主張した。現段階で新型肺炎の影響が最も深刻な中国も、中長期的には世界経済の牽引役であり続けると予想している。
新型肺炎や米中貿易摩擦などの逆風がさらに強まることを懸念し、不動産市場に安定収益を求める投資家が増えていると分析。特に日本の東京圏にある物流施設や集合住宅、オフィスなどの賃貸物件を「外的ショックやマクロ経済鈍化への抵抗力を維持する」(同社)と高く評価している。
2020.03.13