
8割超の自治体が所有者不明調査を実施
―国政研、空き家問題の調査研究を公表
国土交通省の国土交通政策研究所は、「空き家問題における土地・建物の所有者不明化に関する調査研究」を公表した。空き家の所有者を調査した経験がある自治体の約7割で、所有者不明の物件が確認されていたことがわかった。これらの自治体のうち、財産管理制度や行政代執行など、何らかの対応ができた自治体は1割強。多くの自治体が所有者不明空き家の対応に苦慮している実態が浮き彫りとなった。
2年間にわたり全国の自治体の空き家担当部署を調査した。自治体へのアンケート調査を実施したところ(回答=1172市区町村)、「所有者調査を実施したことがある」と答えた自治体は84.9%で、多くの自治体で所有者不明による調査が実施されていた。このうち「所有者調査を外部との連携により実施したことがある」と答えた自治体は21.7%だった。
主な連携先をみると、最多は司法書士(会)で48.1%、次いで宅地建物取引士(会)が38.4%だった。一方で63.6%が「外部専門家・機関との連携がない」と回答。多くの自治体では、庁内職員のみで所有者調査を実施している実態がある。
同調査研究では、所有者不明物件に対して何らかの対応ができた自治体の具体事例を24事例紹介している。建物玄関の看板情報を手がかりに、関係者への聞き取りを粘り強く実施し、建物所有者と相続人5人を特定した茨城県笠間市の事例や、所有者が外国籍で死去後に相続人を確知できず、略式代執行を実施した京都市の事例などがある。調査研究により得られたこれらの知見を自治体間で共有することで、業務が円滑化されることを目指す。
2020.03.06