死亡事故に関わるガイドラインを策定へ

─国交省、心理的瑕疵に関する検討を開始

 国土交通省の「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」(座長=中城康彦・明海大学不動産学部長)は、このほど行われた初会合で、死亡事故に関わるガイドラインを策定することで合意した。人の死が関わる問題のため、一定のルールを決めるには難航が予想されるが、年内を目標に指針を示す意向だ。

 初会合では、不動産取引を巡る社会情勢や、不動産取引における心理的瑕疵の概要を議題として取り上げた。不動産の心理的瑕疵には、「反社会的勢力の拠点だった」「風俗営業に使われていた」なども含まれるが、検討会が着手するガイドラインは人の死に関するもののみ扱う方向で合意した。また、議論では、「自然死は瑕疵に当たらないのではないか」という意見が委員から多く出た。

 自然死は病気や老衰などを起因とした死亡であり、誰にでも起こり得る。自然死まで心理的瑕疵として扱うと、賃貸物件の家主が単身の高齢者の入居を拒むケースが増え、高齢者の住宅確保に悪影響を及ぼす懸念がある。一方で、自然死であっても長期間発見されず、遺体の腐敗が進んでしまった場合は判断が異なる。死亡してから発見されるまで3カ月かかったケースで、瑕疵に当たると判断された裁判例がある。自然死でも、遺体が見つかった時の状態、発見されるまでの期間、近隣住民の周知の程度などを勘案して判断する必要があると考えられる。

 死亡事故については、宅建業者が取引相手に説明しなければならない心理的瑕疵に当たるかどうか、これまでは裁判例の積み重ねから推し量るしかなかった。指針が示されるその道筋も含め注目の検討会となる。

2020.02.14