地域金融機関が不動産業向け貸出に慎重姿勢

~日本銀行の「金融システムレポート」から

 日本銀行が半期に1度公表する「金融システムレポート 10月号」で国内銀行の不動産業向け貸出総額は2019年6月末時点で約80兆円となり、引き続きバブル期を上回る過去最高水準と示された。新規実行額(フロー)ベースでは、2017年度以降、前年対比減少が続くも残高(ストック)ベースでは前年比4%程度の伸びとなった。緩やかに減速しつつも、全産業向けの伸び率である約2%を上回った。業態別では大手銀行が、REITが分類されている中小企業等向けを中心に貸出残高が増加しているが、一部地域金融機関では足元で伸びが鈍化傾向にあると指摘している。

地域金融機関の貸出残高の伸び率が鈍化傾向にある背景として、供給サイドは貸出スタンスを慎重化させる金融機関が増え、需要サイドは賃貸市場の需給に対する警戒感の高まりから投資家マインドが慎重化しており、不動産業界から金融機関への持ち込み案件も減少していることを挙げた。

 同レポートでは今後のリスクとして、地域金融機関を中心に不動産賃貸業向けの貸出を増加させてきたが、今後、世帯数の減少が見込まれるなか、積み上がっている貸出残高が将来的に賃貸需要対比で過大となっていくことを挙げ、注意深く見ていく必要があるとしている。

また、金融活動指標の過熱度を色別で表すヒートマップ表では、全14指標(金融機関のM2成長率や民間実物投資の対GDP率など)のうち13指標が過熱・停滞のどちらでもない状況を示す「緑」となっており、「不動産業向け貸出の対GDP比率」のみ前回に引き続き過熱化していること示す「赤」となり、対GDP比率のトレンドからの上方乖離は広がっていると指摘。不動産業向けの貸出は地域金融機関でやや慎重姿勢が見られつつも、その以前から賃貸業向けの貸出が上伸していたことや、貸出期間が長期ということもあり、ストックで見ると銀行貸出全体を上回る高めの伸びが依然続いているとした。貸出全体に占める不動産業向け比率でも、全体としては横ばいに推移しつつ、地域金融機関では同比率が3割を超えるなど、ばらつきが拡大しているとした。

 一方、「不動産業実物投資の対GDP比率」や「地価の対GDP比率」は「緑」で推移していること、他の不動産取引量、価格動向、関連金融動向など不動産全般の情勢を総合的に勘案すると、バブル期のような過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態とは考えにくいと説明。近年の不動産業向け貸出の増加は、大型の不動産取引ファイナンスが中心であったバブル期とは異なり、REITや不動産ファンド、個人による貸家業など賃貸収入目的の中長期投資向けが中心であり、構造が大きく違うと指摘した。一方で、新たなリスクについても言及し、人口・企業数が減少するなか、賃貸用物件に投資する長期貸出が増加傾向というバブル期とは異なるリスクが蓄積されている可能性があるとし、引き続き注視していくとした。

2019.11.29